顔を見せて

ねえ、君。帽子を取って顔を見せてくれないか？えっ？寒いから嫌だ。そんな事言わないでさ。
それにここは温かい部屋の中だよ。帽子を被っている方がおかしいじゃないか。お願いだから僕に顔を見せてよ。
僕は病気なんだ。だからこんな真っ白で殺風景な病室に閉じ込められている。ここはとても退屈なんだ。
お見舞いに来てくれる両親もお医者さんも僕に何も教えてくれないんだ。
それにここには鏡がないから僕が今、どんな顔なのか分からないんだ。だから君の顔を見せてよ。
僕はね、病気で動けないんだ。体は動かないのに物は動かせるんだ。これ、サイコキネシスっていうんだって。
僕はこんな能力より健康な体が欲しかったよ。夢の中だったらあんなにも元気いっぱいに動き回れるのに…
夢を見ている時は楽しいよ。でもおかしな事に夢の中でも皆、顔を見せてくれないんだ。
だからお願いだよ。顔を見せて。
僕は今、これが夢か現実か分からないんだ。