つばさの行方

5
2

目の前にいる連中は羽もないのに宙に浮いている。何故だ?
それを聞くと答えが返ってきた。
「儂らは付喪神。長い年月を経て道具に宿った物の怪じゃ。宙を浮く事は出来ても空は飛べん」
その説明に私は納得した。
犬のように走る椅子やテーブル。薬缶は真っ赤になって子供達らしい湯飲みを追いかけている。非常に楽しそうだ。
そんな中、先頭を行く万年筆に翼が生えている事に気付いた。
万年筆はゆっくりと空へと上昇していく。
「あれはお迎えじゃ。我々にもいずれああやって天に旅立つ時が来る」
私は万年筆を見送った。空を見上げるといくつもの翼が空を舞っている。
「おお、儂にもついにお迎えが来たようじゃ。」
私に色々教えてくれた入れ歯に翼がくっついた。
「では先に天国に行って待っている。儂はお前の事をずっと愛しているぞ」
さすが夫の入れ歯。あの人と同じように歯の浮くようなセリフを最後に残すと私の手元から去って行った。
ファンタジー
公開:20/01/25 19:02
更新:20/01/25 19:50

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容