猫のアンテナ

ある日気がついたんだ。
うちの猫の近くにいると、誰かの声が聞こえるってことに。

猫の体に耳を近づけて、しっぽをあちこちに向けていたら、ある角度になると声が聞こえた。

なんだかラジオのような、少し遠くから聞こえる声。どうやら、うちの猫はアンテナのようになったらしい。

おっと、この声は、隣の席の平野さんさんじゃないかな？

なんだかドキドキしながら話を聞いていたら、突然自分の名前が出てきて驚いた。

「ああ、松井くん？優しいと思うよ。授業中に指されて、答えがわからなくて困ってた時に、こっそりノート見せてくれた。」

どんな話の流れで、僕の名前が出てきたんだろう。

カーテンが開けっ放しだった夜の窓に映った僕の顔は、どことなくにやけていた。