立中森一(たてなかしんいち)①

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「お世話になりました。あ! 齊藤さんが傘を忘れてるみたいですよ。ではまた来月」
「あ。ほんと! ありがとうございます立中さん」

 傘立てに残る1本の傘。
 私がこの小さな小西歯科医院の受付に就いて3年。院長の小西先生は気難しい先生だ。儲け度外視で患者様に長々と虫歯予防の生活指導等するから、患者が溢れる程流行ってはいないけど、地域の人達から信頼されてて私も尊敬してる。
 立中森一さんは毎月、歯の定期検診に来てる40歳の男性患者様だ。
「ほんと。あの傘は齊藤さんね。連絡してあげて」とベテラン歯科衛生士の渡辺さん。
 私はどうしても解らず渡辺さんに聞いてみた。
「立中さんって月1回の定期検診だけで齊藤さんに会った事もないのに、どうしてあの傘が齊藤さんのって判ったんですかね?」
「たしかに面識はなさそうね。でも立中さんが言うなら間違いないわ」
 根拠ない推論。
 だけどなぜか私も心底、納得した。
ミステリー・推理
公開:20/01/27 01:12
更新:20/05/23 03:04
立中森一(たてなかしんいち) 推理物シリーズ

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
 勉強になりますので、どのようなことでもお気軽にコメントいただけると嬉しいです。厳しいご意見もお待ちしております。
 どうかよろしくお願いいたします。

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