幸福のチョコレート

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北国商事のオフィスには、時折、赤戸印刷所のおじさんが、チョコのさし入れをしてくれる。
パンフレット等の印刷を頼んでいる、赤戸印刷所は、家族経営の小さな町工場だ。

その、配られるチョコの中に「幸福のチョコ」があるという噂がある。

さて、営業部のケイ子部長にも「ガーナ・マイルド」が一枚、届いた。
人より多く働き、部下にも、つい多くのノルマを与える癖があるケイ子部長。

部長が一片のチョコを口に含むと、南国の明るい日差しが広がった気がした。

その時、部下が頭をかいてやってきた。
営業のノルマが未達成だという。

普段ならイラっとするケイ子部長は、言った。
「ノルマが上がる。仕事が進む。仕事で暮らしが豊かに。豊かでのんびり」
「は?」
「のんびり。じゃ、今そうしましょうか。いいのよ、ゆとり持っていこう」
周りの皆は、目を丸くした。

部長はにっこり笑うと、また、チョコを一片、口にした。
その他
公開:20/01/26 14:43
更新:20/01/27 00:11

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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