だーれだ？

「だーれだ？」
部屋で一人、本を開いていると突如その目が覆われた。
誰だと聞かれても困る。僕は一人暮らしだし、彼女もいない。部屋の鍵はきちんと閉めてあるし誰も入って来られないはずだ。
「ねぇ、何とか言ってよ」
それでもなお僕に問いかける声。何と答えていいか分からない。
顔を見ると僕より若干若い女の人。本当に誰だこの人？
女の人はやっと異変に気付いたようだ。僕から手を離すと後ずさりした。
そうか。ずっと僕につきまとっていたのはこの人だったんだ。
僕はそのせいでノイローゼになって、自殺する羽目になった。服毒自殺して数時間だ。見た目にはまだ人の形を保っている。
しかし死人に口なし。僕の体は何も答えられない。

ああ、良かったよ。自殺者は例外なく地獄に連れていかれるんだ。
僕は女の人の腕を掴んだ。突然金縛りにあったみたいに動かなくなった腕を見て驚いている。
折角だし、地獄まで連れて行ってあげるよ。