騒々しい密室

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 エレベーター内に閉じ込められた作家が一人、懐から手帳を取り出す。
 指一本動かせないほど込み合ったエレベーターへ痩せた男が駆け込んだ直後、警報が鳴り、赤色灯が明滅した。重量オーバーにより運転が停止し、扉が閉鎖されたのだ。
 ルール1 適正重量になるまで重量を減らす
 ルール2 減らされる重量は民主的に決する
 ルール3 制限時間を越えれば全重量を廃棄する
 ファンファーレと共に、エレベーターの四方の壁の天井付近に、縦1M横2Mの細長い穴が開いた。そこから重量を放り出さねばならないのだ。
 目配せと品定め。盛り上がる筋肉でエレベータ内はさらに窮屈になる。
 ゴングが鳴った。
 全員が腕を足を腰を背を突っ張り、自分以外を上へ、上へ。結果、全員が壁に押し付けられ、一塊となって持ち上がっていき、ヒュン! と全員が穴から吸い出された。

 扉が開いた。
 作家が一人。手帳に何かを書き続けている。
ミステリー・推理
公開:20/01/24 13:38
更新:20/01/24 17:04

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

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