アイドルオーディションを受ける曽根さん
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ここは華やかな芸能界の登竜門となるオーディション会場。
アイドル候補生たちは台本を与えられて演技をする。
曽根さんは幽霊のような姿でそこに現れた。
「私のお弁当、半分あげる。はい、刺身よ。あーん…」
卑屈な笑みを浮かべ、無抑揚な声を出す曽根さんに、審査員は苦笑いした。
「いやきみー、勝手にアドリブで刺身とかやめ…」
その刹那——。
外科手術用の鉗子で心臓の冠動脈をつねるような曽根さんの鋭利な視線に審査員は捉えられた。
骨の髄まで悪寒に浸される。
「魚のバラバラ死体……嫌いなのぅ?」
曽根さんは、固いクルミをひと噛みで砕きそうなほどギリリと歯を軋ませ、やがて両眼の焦点をずらすようにして審査員の背後にあるものを見つめながら、口端に嗜虐的な歪(ひず)みを刻んだ。
「……ご、合格です!」
審査員は生き肝を抜かれたように滝の汗を流し、無心に判を三回押した。
頬を桃に染めて、曽根さんは少し照れた。
アイドル候補生たちは台本を与えられて演技をする。
曽根さんは幽霊のような姿でそこに現れた。
「私のお弁当、半分あげる。はい、刺身よ。あーん…」
卑屈な笑みを浮かべ、無抑揚な声を出す曽根さんに、審査員は苦笑いした。
「いやきみー、勝手にアドリブで刺身とかやめ…」
その刹那——。
外科手術用の鉗子で心臓の冠動脈をつねるような曽根さんの鋭利な視線に審査員は捉えられた。
骨の髄まで悪寒に浸される。
「魚のバラバラ死体……嫌いなのぅ?」
曽根さんは、固いクルミをひと噛みで砕きそうなほどギリリと歯を軋ませ、やがて両眼の焦点をずらすようにして審査員の背後にあるものを見つめながら、口端に嗜虐的な歪(ひず)みを刻んだ。
「……ご、合格です!」
審査員は生き肝を抜かれたように滝の汗を流し、無心に判を三回押した。
頬を桃に染めて、曽根さんは少し照れた。
青春
公開:20/01/23 20:11
曽根さん
アイドルオーディション
最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。
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