うろん

　うどんやかと思えば暖簾には「うろん」と白抜き文字で。
　スマホがあり、知らない言葉の意味はたちどころに理解する頭がある。

　うろん【胡乱】
確かでなく、怪しいこと。うさんくさいこと。

　いつも通り過ぎるだけだった「うろん」ののれんをくぐる。
　客がいない店内に湯気がモクモク。明らかに割り箸の数が多く、みんな細い方が天井を指してテーブルの真ん中に置いてあるし、灰皿は凹んでいる。

　いらっしゃい！　の声も遠い、禁煙の張り紙。

　メニューは無い。「かけうろん！」と厨房らしき方へ。
　昼間から巨人楽天戦のナイターがうつるブラウン管はビデオだ。エンドレスで３回の裏ばかり。篠塚？　仁志？

　少年チャンピオンばかりの本棚が油でぎとぎと。「鉄鍋のジャン」が破られている隔週号。

　不意に雨音。傘が無いことに気づく。反射的に見る時計はいつも秒針が邪魔。

　うろんはうまく３２０円だった。