陽炎

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全国高等学校野球選手権大会決勝。
俺は強打の大阪東縁高校を相手に全力で投げていた。大阪東縁は数名がプロ入り確実。四番の井上はメジャー入りも噂の超高校級スラッガーで強大な壁として立ち塞がる!
記録的猛暑の甲子園で俺は陽炎を纏い入道雲を背負いながら魂を燃やした。腕がちぎれてもいい。奴には負けられない。歯をくいしばるが何度も負けそうになる。負けられない相手。それは暑さでも、甲子園の魔物でも、東縁高の井上でもなかった。それはチームメイトの中田だった。
去年の夏。チームのエースは中田だった。俺は毎日走ったが、奴はその上をいった。どれだけ努力していたか。俺はあの男の強さを知った。
今年は俺がエースナンバーを背負っている。マウンドに立つ俺が奴に負ける訳にはいかない。
「見てるか。中田。」
最後の打者を打ち取った時、俺は中田と抱き合った。遺影の中田は笑顔だが泣いていた。

あれほど暑い夏はもう来ない。
青春
公開:20/01/25 01:05
更新:20/01/25 23:16

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
 勉強になりますので、どのようなことでもお気軽にコメントいただけると嬉しいです。厳しいご意見もお待ちしております。
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