柱時計の悲劇

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老婆が一人で暮らしていた。

あるとき老婆はこたつでお茶を飲んでいたのだが、突然腹が立ってきた。誰だって突然腹が立つことはある。

ちょうどそのとき柱時計が鳴った。

「こんなときに鐘なぞ鳴らしおって。私は人の気持ちが分からない奴が一番嫌いだよ。思い知るがいいさ」

そう言って老婆は時計を壁から取り外し、床に叩きつけた。さらに老婆は押し入れから斧を持ち出し、両手でしっかり柄を握って時計に向けて振り下ろした。何度も振り下ろした。

そのうちに老婆は疲れてきたので、こたつに入って一休みすることにした。少し落ち着いてくると、老婆は知り合いの時計店に電話をかけた。

「いつもの時計をもう一つ。ええ、明日なら何時でも家におりますので」

そして老婆は時間をかけて斧の刃を研いだ。
ホラー
公開:20/01/21 18:47
更新:20/01/31 16:16

meerkat( 石や岩の多い荒地やサバンナ )

シュール・不条理・ナンセンス

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