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「ねえ、とうちゃん。どうしてうちはよそとちがってだめなの?」

「それはな、お前のご先祖様のせいで仕方ないんだよ。」

「なにそれ?」

「もう200年以上前のことになるか。江戸時代の後半、お前のご先祖はある日隅田川でうなぎを釣ったんだ。」

「それで?」

「うなぎが“どうか助けてください。御恩は一生忘れませんから”と言ったそうな。それでご先祖様は釣ったうなぎを川に戻してやったんだと。」

「うなぎがしゃべんの? それから、なんかもったいない話」

「まあまあ、真偽の程はわからんが、それ以来、ウチの家系はこうやって代々無事に過ごしてこられたのさ。」

「別になんにもお恩返しされてないじゃん」

「平凡がいちばんだろ。だから、我が家はそれに感謝してうなぎを食べないのさ。わかったか?」

「単にケチってだけだろ。うなぎ食べたいよぉおおお!」

(うーん、騙せなかったか)
その他
公開:20/01/23 07:00
更新:20/01/22 12:07
272 岡本綺堂の短編 放し鰻 オオカミの自信作

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド、タイッツー )

武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。

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