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 私はずっとこの世界は一冊の本だと思っていた。いつか空からページが落ちてきて、この世界は閉じられる。そう思っていた。まるで空が落ちてくると憂いて、いつも傘をさしていたという杞の国の人みたいに。


 それは現実の話となった。最先端のテクノロジーで、この世界は一冊の本だということが解明された。いつ本が閉じられるか。それは誰にもわからない。物語が終われば本は閉じられる。あとは読み手が飽きてしまっても本は閉じられるだろう。


 人々は「この世界の物語」が面白くなるよう努力した。「読み手」が退屈しないように。「読み手」は何なのかはわからない。それは神と呼ばれるものなのかもしれない。


 世界には馬鹿が溢れた。賢い人ばかりではつまらないからだ。揉めごとも絶えなくなった。起伏のない平穏な日々はつまらないからだ。殺人は日常茶飯事だ。誰かが死ねば物語は盛りあがる。


 そうして、いまの世界ができた。
その他
公開:20/01/22 22:37

千億アルマ( Tokyo, Japan )

ショートショートは、短い小説ではなく、読解可能性を最小単位へ圧縮した記録媒体である。本アーカイブは作品を保存することを目的としない。保存されるのは、読者との接触によって意味が生成・変容する条件そのものである。ジャンルは分類ではなく読解の副産物であり、一篇はSFにも日常にも寓話にもなり得る。物語とは完成された構造ではなく、読むという行為のたびに更新される暫定的な現象である。ゆえに作者は創作者ではなく観測者であり、アーカイブとは物語の集積ではなく、物語が発生し続ける可能性を保持するための実験的装置として位置づけられる。長すぎるだろ、これ。

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