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 私はずっとこの世界は一冊の本だと思っていた。いつか空からページが落ちてきて、この世界は閉じられる。そう思っていた。まるで空が落ちてくると憂いて、いつも傘をさしていたという杞の国の人みたいに。


 それは現実の話となった。最先端のテクノロジーで、この世界は一冊の本だということが解明された。いつ本が閉じられるか。それは誰にもわからない。物語が終われば本は閉じられる。あとは読み手が飽きてしまっても本は閉じられるだろう。


 人々は「この世界の物語」が面白くなるよう努力した。「読み手」が退屈しないように。「読み手」は何なのかはわからない。それは神と呼ばれるものなのかもしれない。


 世界には馬鹿が溢れた。賢い人ばかりではつまらないからだ。揉めごとも絶えなくなった。起伏のない平穏な日々はつまらないからだ。殺人は日常茶飯事だ。誰かが死ねば物語は盛りあがる。


 そうして、いまの世界ができた。
その他
公開:20/01/22 22:37

千億アルマ( Tokyo, Japan )

Senoku ALMA
https://note.com/shiro_mid

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