山の大神

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昔、山奥に山犬の家族が居た。縄張りは中腹から頂上に掛けて。だが或る日、仔の一匹が崖から転がり落ちた。
その仔犬を通り掛かった老人が村へ連れ帰り懐抱した。
翌夕刻、仔を探して犬達が村中を走り回った。その声に仔が飛び跳ねた時、銃声が轟いた。立て続けに何発も。仔は恐怖でその命の緒を手放した。

猟銃により仔等を奪われた母の狂気は凄まじかった。疾風の如く駆け爪を牙を揮い、何発もの凶弾を受けても立ち上がった。やがて外に居たヒトも母犬も倒れると、父犬がゆっくり数歩進み、村中をねめつけ家の中のヒト達と一つ一つ目を合わせた後、低く長く咆哮した。
其は村人達の心の臓に恐怖を刻み込んだ。
咆哮した後、父犬は山へと帰って行った。
村人達は畏怖し、犬達の屍骸を山の中腹に埋め祀った。其れより上を禁足地とし大神様の居わす所として崇め二度と山から下りて来ぬ様、伏して祈った。

以来、山神様は其処に居わすと言う。
ホラー
公開:20/01/22 19:27
更新:20/01/22 19:28

右左上左右右

アイコンは壬生野サルさんに描いて頂きました。ありがたや、ありがたや。

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