興白波(おきつしらなみ)
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針に掛かった花びらが、今日は淡紅だった。
鼻を近付けても、あまり匂わない。しばらく掌で転がして、萎れてきたから海へ投げた。空の青と海の白と、いつも通りの色に戻る。
竿を垂れる。ふんわり泡立つ海は、近頃騒がしい。大風が渡ると雲が荒れ、釣りが出来なくなる。それもいつもの事だけど、釣れないとあの子が来ない。
竿を上げる。また淡紅。形も少し違う気がする。すぐ海へ投げる。
白くないから駄目なんだろうか。匂わないと嫌なんだろうか。
――また淡紅。海へ投げる。
あの子が来ない。
風が生温くて、藍色の空に星が数粒。
夜釣りは普段しないけど、ここ何日も海は時化で、ようやく落ち着いたところだ。黒い海に探り探り竿を垂れる。
「……星かな」
弱い光が一つ。花びらじゃない。
「駄目!」
払われた僕の手から光が飛び、小さな手で震える様に瞬いた。夜目にも白い衣が、翻って風に融けた。
雲海に波が逆巻き、船が酷く揺れた。
鼻を近付けても、あまり匂わない。しばらく掌で転がして、萎れてきたから海へ投げた。空の青と海の白と、いつも通りの色に戻る。
竿を垂れる。ふんわり泡立つ海は、近頃騒がしい。大風が渡ると雲が荒れ、釣りが出来なくなる。それもいつもの事だけど、釣れないとあの子が来ない。
竿を上げる。また淡紅。形も少し違う気がする。すぐ海へ投げる。
白くないから駄目なんだろうか。匂わないと嫌なんだろうか。
――また淡紅。海へ投げる。
あの子が来ない。
風が生温くて、藍色の空に星が数粒。
夜釣りは普段しないけど、ここ何日も海は時化で、ようやく落ち着いたところだ。黒い海に探り探り竿を垂れる。
「……星かな」
弱い光が一つ。花びらじゃない。
「駄目!」
払われた僕の手から光が飛び、小さな手で震える様に瞬いた。夜目にも白い衣が、翻って風に融けた。
雲海に波が逆巻き、船が酷く揺れた。
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公開:20/01/19 22:04
天釣舟②
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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