4
3
(承前)
僕の耳には、ピアノ曲が流れていた。ずっとイヤホンで聴いていたのである。「Amore」という、本来はアップテンポだった快活な曲が、ゆったりと演奏されている。哀愁のある和音と旋律が淋しさを誘うようだった。
ハンバーガーとポテトを食べ終わり、飲み切れなかったコーヒーは持って行くことにした。包み紙などを捨てて外に出る。小雨はまだ降り続いていた。白いひとひらがビルの合間に時折ちらほらと見える。
下を見ると、そこで斜めにうずくまっていた筈の鳩はいなかった。
痕跡ひとつ残さず、いつの間に消えたのだろうか。飛んで行ったのではあるまい。僕が初めから見間違えていたわけでもない。カラスか野良ねこにでも、まさか連れ去られたのだろうか…。
僕のコーヒーカップの蓋には、その鳩に遣ろうとしたパンがふたつ乗っかったままだ。歩道に出ると、いつものように傘をささず、僕は曇り空の雑踏へと向かって歩き始めた。(了)
僕の耳には、ピアノ曲が流れていた。ずっとイヤホンで聴いていたのである。「Amore」という、本来はアップテンポだった快活な曲が、ゆったりと演奏されている。哀愁のある和音と旋律が淋しさを誘うようだった。
ハンバーガーとポテトを食べ終わり、飲み切れなかったコーヒーは持って行くことにした。包み紙などを捨てて外に出る。小雨はまだ降り続いていた。白いひとひらがビルの合間に時折ちらほらと見える。
下を見ると、そこで斜めにうずくまっていた筈の鳩はいなかった。
痕跡ひとつ残さず、いつの間に消えたのだろうか。飛んで行ったのではあるまい。僕が初めから見間違えていたわけでもない。カラスか野良ねこにでも、まさか連れ去られたのだろうか…。
僕のコーヒーカップの蓋には、その鳩に遣ろうとしたパンがふたつ乗っかったままだ。歩道に出ると、いつものように傘をささず、僕は曇り空の雑踏へと向かって歩き始めた。(了)
その他
公開:20/01/19 11:01
更新:20/01/19 20:47
更新:20/01/19 20:47
2019年9月14日から参加いたしました。
しみじみとした後味や不思議な余韻が残る作品を目指しています。
どうぞ宜しく…。
ちなみに、写真は一部を除き、全て自分で撮影したものです。併せてお楽しみ下さい。
【お気軽に各作品の黄色い★をポチって頂けましたら嬉しいです】
☆ブログも更新中。「カツブロ 白ねこのため息」で検索〜‼︎☆
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
現在、資格取得(英検1級など)の勉強中のため、投稿ペースが落ちていますが、
これからも引き続きご愛顧のほど、何とぞ宜しくお願いいたします。ペコリ。
ログインするとコメントを投稿できます