曇り空に鳩は(2)

4
3

(承前)
僕の耳には、ピアノ曲が流れていた。ずっとイヤホンで聴いていたのである。「Amore」という、本来はアップテンポだった快活な曲が、ゆったりと演奏されている。哀愁のある和音と旋律が淋しさを誘うようだった。
ハンバーガーとポテトを食べ終わり、飲み切れなかったコーヒーは持って行くことにした。包み紙などを捨てて外に出る。小雨はまだ降り続いていた。白いひとひらがビルの合間に時折ちらほらと見える。

下を見ると、そこで斜めにうずくまっていた筈の鳩はいなかった。

痕跡ひとつ残さず、いつの間に消えたのだろうか。飛んで行ったのではあるまい。僕が初めから見間違えていたわけでもない。カラスか野良ねこにでも、まさか連れ去られたのだろうか…。
僕のコーヒーカップの蓋には、その鳩に遣ろうとしたパンがふたつ乗っかったままだ。歩道に出ると、いつものように傘をささず、僕は曇り空の雑踏へと向かって歩き始めた。(了)
その他
公開:20/01/19 11:01
更新:20/01/19 20:47

白ねこのため息( あちらこちらにいます )



2019年9月14日から参加いたしました。
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ちなみに、写真は一部を除き、全て自分で撮影したものです。併せてお楽しみ下さい。

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