22
15

 水の中に潜ると、ぐにゃぐにゃと光線が歪み、ここが私の慣れ親しんだ世界でないことを教えてくれる。それと同時に、朧な光の中に遠い祖先の記憶に結びつく面影も漂っている気がして、不思議な感覚にとらわれる。
 大きな魚がこちらへ泳いできた。不気味な姿だが、なぜか恐ろしさは感じなかった。遠くにいると一色に塗り潰されているように見えるのに、近づくと精緻な、小さな斑が、その表面を埋め尽くしているのがわかった。魚の圧倒的な存在感が出現したのは、その模様を見たときだった。それまでは、まるで幻のようにしか感じていなかった。
 魚の頭の大きさは、私とあまり変わらない。漠然と、人間と同じ知能のありかをそこに感じる。魚はしばらく私の周りを遊泳し、そのまま無言で去っていった。今日は友達にはなれなかったが、挨拶くらいはできた気がした。
 明日になったらまた潜ってみようと思った。またあの大きな魚に出会えるだろうか。
青春
公開:20/01/19 10:20

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容