しゅうしゅうへき

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年を取り自由な時間が持てるようになってから、私は秋を集めるようになった。
もう少しだけ心地良い季節の中にいたい。そんな出来心で隣家の庭から柿一個分の秋をもいだのが、秋集癖の始まりだった。
並木道や公園、旅先の山林や渓谷。毎年あらゆる場所で秋刈りを行い、誰よりも長く秋を満喫してきた。
「今年は秋が短かった」
そう感じていた人もいたはずだが、私のせいでもあったのだ。
だが、それも今年で終わりだ。私は読書を止め夕陽が射す部屋を出ると、よく知る家族のもとに行き、残っていた秋を置いてきた。
今日あの子は父親とスポーツで汗を流した後、母親の手料理で食欲を満たすだろう。昔の私のように。
まだ掌には稲の実程の秋が数粒残っている。私はそれを白い空へと放り投げた。
これはこれから永い冬眠に入る自分への…。

「うひゃー積もったな!昨日とは大違いだ…どうした?」
「パパ…あそこだけ雪じゃなくて紅葉が積もってる」
ファンタジー
公開:20/01/17 21:45
更新:20/01/18 05:58

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