誘拐

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 案の定、両親も警察も、私の救出を諦めた。
 私を連れ去った誘拐犯はそのことを知らされると、心底つまらなそうな顔で私を眺め、ゆっくりと指を動かし始めた。
 もう逃げる気力もない。
 気力があったとしてもどのみち私は動けない。
 私の足首は既に、誘拐犯の掌の皺深くまで埋まってしまっている。
 私のため息とともに、誘拐犯はゆっくりと拳を閉じた。
その他
公開:20/01/17 18:48

六井象

超短編小説を中心とした、短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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