ばしめんこけ

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 軒に干し首がぶら下がっている。幸い庭が広い上に垣根もあるので近づけないし、歩きながら遠目に見ている分にはほとんど干し柿なので、気にしないことにする。
 茅葺屋根に茅葺屋根形のトタン帽子を被せたような家屋が点在する里山だ。小川には水車があり、臼で挽いて粉にしているのは骨だ。
「にかぁはおらぶし(お肉は食べてしまいますし)、ずだぁさげずるべだけえね(頭は吊り下げますから)。ほんだわ! ぎょくためはぬちぬちせねばってかんけ(そうだ! 目玉の新鮮なのが残っていますからぜひご賞味しませんか)?」
 丈夫な骨は骨組みにするし、小さな骨は細工物にする。だから臼に挽かれる骨は「ばしめんこけ(無用の物)」と呼ばれる。
 この村にはサイクリングで昨日の夕方に着いた。一軒だけの民宿に宿泊すると、今朝、自転車が粉に挽かれていた。
「ばしめんこけさったらんばぎょくさめけれ」
 さらに、鞄もスマホも無くなっていた。
ホラー
公開:20/01/17 15:45
更新:20/01/17 17:08

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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