きのうみた夢なんて忘れたけれど

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「銀座線の爆破は処理されました。マリファナをお持ちの方はお通りください」
 アナウンスを聞いて立ち止まる者はいない。ヤミ流れの健康食品を売るチェーン店と天井まで手つきかばんや足つきの靴が並ぶショップが軒を連ねる中、人の流れにさからいながら、少女が骨がぬけた父をひきずっている。
 娘のあとを追うが、やっとたどりついた駅ビルの屋上には誰もおらず、フェンスもないビルは空に浮かんでいるようで、ついビルの縁から先に踏み出したとき…

 いつもの駅のホームにいた。線路の先には見慣れた広告でタレントの笑顔が貼りついている。やれやれこんなとき白昼夢かと一人苦笑い。
 少女の後ろ姿だけはくっきりと覚えてる。電車の陰が近づいてくる。
 半歩歩み出す。
 空は広い。
 迷うはずないのに立ち止まる。
 見えない手が背中を押す。
 落ちる目の端でとらえたのはあの子。そうだ。頼んだままだ。陰が大きくなりそし
 
その他
公開:20/01/19 00:41

kei

再開しました。今までコメントをしてくださった方々、お返事できず失礼しました。
これからもよろしくお願いします。

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