つなぐ

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体が重くて目が覚めた。
腰をしっかりホールドオン。
布団ではない重さが乗っかって。

耳に吹き掛けられる息は静かで、女とも男とも分からない。

それから何か、凄まじい炎が襲うのだ。わめきたくても声がでない。抗うも、体をよじることもできない。

見えているのは映像のようで、灼熱を感じる現実だった。

それが過ぎると嵐が遠ざるように意識がクリアになり、体が動かせるようになる。疲労した体を宥め、何とか起き上がる。

何度目か分からないこの現象。不思議なのはいつも枕元に、触れると消える花が1輪。

ある日の遠出。がらがらの電車。ふと何でもなく、顔をあげて見えた景色に衝撃が走る。いてもたってもいられず、そのまま次の駅で電車を降り、ひたすら走った。

小綺麗に手入れされた墓地。知らないのに知ってる名前が2つ。確かこのくらいの年齢、時期だった。あの娘は確かに特攻へ向かう私に、花1輪を掲げて見送ったのだ。
公開:20/01/18 22:29
更新:20/01/19 12:45

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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