文化祭

6
5

六限目の特別授業。文化祭の出し物について話し合うことになった。
うちの高校では、一人ずつ案を練って企画書をつくり、生活指導員の先生にプレゼンしなすることになっている。
案の定、指導室の前の廊下は企画書を持った順番待ちの生徒たちで長蛇の列。僕の後ろには丸メガネをかけた、きまじめそうな女の子が並んでいる。
退屈なので「君はどんな企画?」と尋ねると、
彼女はそっと眼鏡に手を触れ、か細い声で「性教育番組をつくって流したいの」とつぶやく。
「今こそ老人たちに間違った情報ではなく、正しい性知識を教えるべきなのよ」
 と彼女は熱を帯びて語り出す。「あの人たちは目先の快楽に目が行きがちだわ。ねえ、あなたもそんな風に感じることはない? これは大事なことなのよ」
彼女はずっと企画書を大事な宝物みたいに胸にぎゅっと抱きかかえている。
めがねの奥の瞳が、キラキラと星みたいに輝いている。
僕は、瞬く間に恋をした。
恋愛
公開:20/01/16 01:36

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容