恐怖せし九郎判官

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 九郎判官義経は巷間伝えられるが如き勇の者にあらず。その最期も膾炙されし物とは遠きが真なり。この過ちを何某かの責とするには与せず。九郎こそ勇の者であれとの世情の念、九郎に附き随いし武蔵坊、同じう非業の最期を遂げたる木曽殿、これらが由縁の時に一になり時に分かたれしが故なり。

 すなわち泥田にて立ち往生せしは木曽殿にあらず武蔵坊にあらず九郎なり。鎌倉殿より逃れども、泥に足とられ供もなく留まりたるところ、討手迫りしに恐れおののき立ちすくみたるまま討ち果たされしが九郎判官真実の最期なり。

 田畑に立ちすくみたる案山子が事を異邦にて「すけあーくろう(恐怖せし九郎)」と呼び習わしたる、この由なり。
その他
公開:20/01/16 00:26

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