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 「この国で最も狭い隘路はどこ? 私を納得させてくれた人に私をあ・げ・る」
 公募ガイドに掲載されたこの募集を見て、隘路マニアたちは、それぞれがホームとしている隘路から半裸身を乗り出して雄叫びを上げた。主催女性の写真が隘路マニアにどストライクだったせいだろう。
 壮絶な隘路競争を制した男が、得意げに女の前に進み出て「国道指定の62センチ。如何?」と目配せした。鉄板隘路だった。隘路のモニターを注視していたマニアのほとんどが臍をかんだ。だが、女は眉間に無数の隘路を拵えて、男を怒鳴りつけた。
「センチって何さ? ヘクター。こいつを62センチとやらにしてやりなさい」ギャー!
 再起不能だという。
「あれが認められないとは……」
 チャンスが残されたのは喜ばしかった。だが、誰一人として女が所望する隘路のイメージが掴めず、誰も女を訪ねないまま、5年が経過した。

「さびしいね。ヘクター」
「御意」
その他
公開:20/01/15 18:22

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

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