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其は大時化の後、村の孤児が長者の家に「買い取ってくれ」と持ってきた仏像だった。右掌を見せ、左は肘から先が無かった。
その頃、下働きに疱瘡が流行り暇を出した。
少しして、長者の子供が疱瘡になり医者を呼んだ。

奥方は最初に疱瘡になった下女の親に文句を言おうと仲介屋へ行くと、仲介屋は顔をしかめた。
「あの家は疱瘡で全員倒れ、家も遺体も焼かれた」と。

家に帰った奥方は、夫である長者が倒れているのを見つけた。駆け寄ろうとしてそのまま崩れ落ちる。

翌日、訪れた医者が惨状を発見した。

子は布団で息を引き取っていた。

遺体ごと家は燃やされる事になった。

火が燃え広がるにつれ、何かが聞こえてきた。それは徐々に大きくなった。住職は、他所の国の神の断末魔だと言った。
やがて、全てを焼き付くした後、燃え残った仏像を祠で囲った。

その後、疱瘡が流行る事はなかった。

今も、その祠はどこかにあるという。
ホラー
公開:20/01/17 06:00

右左上左右右

アイコンは壬生野サルさんに描いて頂きました。ありがたや、ありがたや。

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