未必の故意

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 留置所に弁護士が現れると、男は一気にまくしたてた。
「俺は女房を殺そうとしたんだ。アイツをぶっ殺そうと思って電子レンジを投げた。それだけだ。いいか、これは事故なんだ。殺人じゃねえ。そうだろ?」
 弁護士は椅子に座ると、率直な顔つきで、男と向き合った。
「窓の外に通行人がいるかもしれないとは、思わなかったのですか?」
「当たり前だ! 下に人がいるとわかってりゃ、投げたりしねぇよ! 殺すつもりはなかったんだ……な?」
「でも、あなたはもし人がいたとしてもまぁいいかと思い、その時は怒りにまかせて電子レンジを投げたのではありませんか?」
「だから人がいるとは思わねーよ!」
「では絶対に人がいなかったと言える理由は?」
 男は、ハッと沈黙した。
「未必の故意と言って、あなたのような場合でも裁判では殺意があったものと見なされます。それでもあえて事故だと主張しますか?」
 男は、血の気を失った。
その他
公開:20/01/16 18:13
未必の故意 最近知った言葉 法律用語

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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