母のつばさ
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「ねえ、ママの羽、どこにあるの?」
幼い頃、そんなことを尋ねたのをふと思い出した。なぜそんなことを聞いたのか。それは、常々、父がこう言うのを聞いていたからだ。
「りさはかわいい。僕の天使だ」
天使なら羽があるはずだ。それが疑問だったわたしはそう聞いたのだった。
その時、母は家でベッドにいて、わたしの頬を優しくなでながら微笑んで、こう答えたのをおぼえている。
「それはね、ここであなたやあなたのパパといっしょに生活するために取ってしまったからなのよ」
それから15年以上が過ぎ、わたしも天使の存在など信じないおとなになっていた。
不治の病で病院のベッドに横たわる母は相変わらず美しかったが、それが逆に儚げな印象を与えていた。
父に手を握られた母が「さよなら」とつぶやいた瞬間、心電計のモニターがフラットになり、ベッドから浮きあがった母の背中には、大きな白いつばさが生えていた。
幼い頃、そんなことを尋ねたのをふと思い出した。なぜそんなことを聞いたのか。それは、常々、父がこう言うのを聞いていたからだ。
「りさはかわいい。僕の天使だ」
天使なら羽があるはずだ。それが疑問だったわたしはそう聞いたのだった。
その時、母は家でベッドにいて、わたしの頬を優しくなでながら微笑んで、こう答えたのをおぼえている。
「それはね、ここであなたやあなたのパパといっしょに生活するために取ってしまったからなのよ」
それから15年以上が過ぎ、わたしも天使の存在など信じないおとなになっていた。
不治の病で病院のベッドに横たわる母は相変わらず美しかったが、それが逆に儚げな印象を与えていた。
父に手を握られた母が「さよなら」とつぶやいた瞬間、心電計のモニターがフラットになり、ベッドから浮きあがった母の背中には、大きな白いつばさが生えていた。
ファンタジー
公開:20/01/15 07:00
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「つばさの行方」に応募したもの
武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。
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