すごい本（ラヴクラフト編）

　その本を読んだあなたは、生まれて初めて名状し難い迷信的恐怖が全身を駆け抜けるのを感じた。
　宇宙の深淵から、冒瀆的で忌まわしき者が、あなたを呼ぶ声がする。
　それは脳内に寄生した虫が直接あなたの心に語りかけてくるような吐き気を催す呻きであり、やがて距離感の喪失を覚えるほどの巨大なゲル状の粘塊が、朧げに、あなたの眼球を通さずに見えてきた。
　その異形の生物は、蛹（さなぎ）から孵ったばかりの蝉のような白色をしており、表皮からは筋の入った夥しい数のチューブ状器官が這い出し、蠕動（ぜんどう）運動をしている。中央部には割れ目があり、内側はメロンの黄緑の果肉を思わせるびらびらとした襞（ひだ）が蠢いていた。
　現実離れした、その混沌たる悍（おぞ）ましき姿を見たあなたは、すぐにでも自分の頭をショットガンで吹き飛ばさなくてはならないという奇怪な感情に支配された。
　それでは、SAN値チェックをどうぞ！