彷徨

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疲れていたのだろう。

私はその日いつもの電車に乗ったのだが、それ以降の記憶がない。気が付くと私は一人ジャングルにいた。無意識のうちに来てしまったようだ。

持っていたはずの鞄はない。着ていたスーツもない。ターザンのような布を腰に巻いているだけだった。

周囲に人間の気配はなかった。見渡すと、動物園や図鑑でしか見たことのない猿や鳥が動き回り、飛び回っていた。

私はどうすべきか考えた。だがどうしようもない。携帯電話もなくなったので会社や自宅に連絡することもできない。第一ここがどこかも分からないし、電波が届くとも思えない。

ところで私は本当に出勤途中だったのだろうか。私の身元を証明できるものは何もない。私は急に存在が不安定になった気がした。自分の名前を呟いてみたが、それが本当に私の名前なのだろうか。

しかし深く考えても仕方がない。私は長期戦に備えて水場を探すことにした。
ファンタジー
公開:20/01/13 20:20
更新:20/01/13 21:34

meerkat( 石や岩の多い荒地やサバンナ )

シュール・不条理・ナンセンス

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