つばさの行方

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祖父が亡くなり、家族皆が涙した。
悲しみに暮れる家族を尻目に幽霊となった祖父は嬉しそうに旅支度を整え、庭先で待っていた。
「死んだのに嬉しそうだね」
幽霊の祖父は驚いたように私を見た。
「ああ、命あるものはいずれ死ぬ。悪いが儂は先に天国に行ってるよ」
「もしかしたら地獄に落とされるかもしれないよ?」
祖父は自信満々に懐から切符を取り出した。
「今から天国行きの迎えが来る。E3系新幹線・つばさ。これで天国まであっという間だ」
今度は私が驚く番だ。銀河鉄道は現在、ここまで進歩しているのか。
「その切符、どうやって手に入れたの?」
「無論、先に逝った婆さんが儂の為に送って来たんだよ。婆さんは寂しがり屋だからな。早く来て欲しいんだろう」
祖父は新幹線が来るまで私に祖母の話をしてくれた。
「おっと、来たようだ」
汽笛を鳴らし、庭につばさが到着した。
祖父はつばさに乗り込むと今度こそ天国に旅立った。
ファンタジー
公開:20/01/13 18:43

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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