七つの傷を持つ男

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「貴様が胸に七つの傷を持つ男か」
私は目の前の男を見据えた。なるほど、こいつは只者ではない。
だが、一つ気になることがある。男はこれ見よがしに上着の前をはだけていたが、どこにも傷が見当たらないのだ。
どういうことだ。
「気になるようだな」
男が見透かしたように言った。
「いいだろう。我が胸に刻まれし七つの傷、とくと思い知るがいい!」

二人一組の相手はいつも先生。
リコーダーのタンギングが一人だけできなかった。
何かあると最初に疑われた。
「おきのどくですが ぼうけんのしょは きえてしまいました」
同窓会や結婚式に呼ばれたことが一度もない。
ずっとマツタケだと思っていた。
ところどころ記憶がない。

気が付けば、私は地面に膝をつき泣いていた。
男も立ったまま涙を流している。
私はなんとか立ち上がり、男に言った。
「小学校のあだ名はうんこマンだ」
がしっ。
私と男は、熱い抱擁を交わした。
その他
公開:20/01/13 18:18

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