相死相合

死が二人を分かつまで…と言う言葉がかつてあった。しかし今では死が二人を分かつ事はない。
役所にて相死相合届にお互いの名前を書くと二人の寿命の平均値が割り出され、それが寿命となる。
祖父母の葬儀が同時に行える。片方だけ長々と面倒を見なくてすむ。等々の理由で高齢夫婦が届け出が多かった。
中には結婚して間もない若者が相死相合届を出しに来た。役所の人間が説得するも判を押し、二人の愛は永遠だと夢見る若者がいた。
相死相合届は一度出すと取り返しがつかない。それを知らずに判を押し、何度も離婚と結婚を繰り返した結果、集団自殺みたいな死に方をする者も出た。
そうした事例があるにもかかわらず、ある小学校では病気で亡くなりそうなクラスメイトの為に皆で寿命を分け合いたい、なんて申し出も出た。
泣ける話だ。私はそうした届け出に対し、警察署に連絡を入れる。
終身刑・無期懲役で収監されている者の寿命を使わせて貰う為だ。