現世も君の隣に

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漁船が転覆して海に呑まれた。死を覚悟した時、心残りは飼い猫のことだった。
悪いな。もう魚を持って帰れねぇや。
俺はお前が美味そうに魚を食ってるのを見るのが好きだった。お前のために美味い魚を獲ってやろうとしたら、このザマだ。
すまねぇ。
ま、俺がいなくてもお前は気ままに生きていくんだろうさ。
猫はいいな。今度、生まれ変わったら、猫になろう。猫になって、お前と番いになるのも悪くねぇ。

そんにゃ記憶が蘇ったのは、腹を空かせて町を彷徨っていた、満月の夜。思い出したにゃ。俺は猫じゃなく、元は人間だったのにゃ。
あの猫はどこでにゃにしてるんにゃ。
いや、もうとっくに死んでるにゃ。
そんにゃ事を考えながら塀の上から夜道を歩く人間を見た瞬間、すぐにわかった。
「フギャア!」
そいつに飛び蹴りをかまし、クルリと回転して着地した。

今度はお前が人間にゃのか!
前世の借りを返すにゃ!
俺に魚を食わせろにゃ!
ファンタジー
公開:20/01/12 17:32
更新:20/01/12 19:26
スクー 見失う輪廻 過去作「来世は君と同じに」 の裏側

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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