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 人通りの少ない夜のトンネル。
 親父が、三人のヤンキーに財布を漁られていた。スーツも脱がされている。あの親父が。真面目で勤勉で、怒ると怖いあの親父が。
 と、どこからか声が聞こえてきた。

「やれ」

 誰だ。奴らではない。声は頭の中で聞こえた。
 ヤンキーの笑い声が、トンネル内に響いた。親父はパンツも脱がされている。警察を呼ばないと。スマホを落とす。ヤンキーがこちらに気づいた。向かってくる。
 親父の目が、弱々しかった。

「何見てんだコラ」
「こいつもやっちゃおうぜ」
「てかよ、なんか声聞こえね?」
「あ、やっぱ聞こえるんだ?なんか、殴れって言ってる」
「同じ同じ!頭ん中で聞こえるわ」
「よくわかんねぇけどお言葉に甘えて」

 僕の頭の中でも聞こえる。同じ言葉が。そして気づく。この声は親父だ。なんだよその能力。救世主が力をくれる流れを期待した僕がバカだった。
 顔面に衝撃が走った。
その他
公開:20/01/12 09:31
更新:20/01/12 09:35

ネオンウィッチ( 2077年の青森 )

X @Neon_W1tch
 

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