色褪せない想い

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今、最新技術で写真の中に入れるサービスが大人気。ただ、自分がその写真に写っていることが条件。写真は確定した過去の瞬間だから、そこに異物は入り込めない。でも、写真の中の自分にならば、入り込むのは可能らしい。
予約して半年後、ようやく順番が来た。
私が潜ったのは高校の卒業アルバムの部活動の集合写真。
写真に潜ると、色鮮やかな風景が目に飛びこんできた。全てがあの時のまま。人も物も、全てが止まっている音のない世界。
振り返り、あの時のままの彼の笑顔を見て、懐かしさに胸が震えた。手を伸ばして頬に触れると、肌は硬く冷たかった。
もしもあの時…。
いや、もうよそう。
過去は変わらないし、奇跡は起きない。
その時、いきなり私の手を彼が掴んだ。
「えっ、どうして!?」
止まった世界の中で彼が微笑む。
「まさか吉岡までこの写真に潜ってるとは思わなかった」

過去は変わらない。
でも、奇跡はあるのかもしれない。
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公開:20/01/11 00:01
更新:20/12/31 10:01

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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