リトルグリーン
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僕が幼い頃、旅人が一人、家に居候していた。よく日に焼けた青年で植物に詳しく木登りが得意だった。彼は旅立つとき、僕に小さな植物の種を手渡した。
「家の庭に植えなさい。きっと助けになる。種が育った頃、俺はここへやってくるから」
「ここは水害が多いから植物なんてすぐ流れちゃうよ」僕は言ったが、彼は笑うだけだった。僕は言う通り庭に種を植えた。
種はすくすく育った。あっという間に屋根より高い大樹になった。僕は窓の外を見下ろしながら思う。
戻ってこないかな。
彼は種が育ったころ戻ってくると言った。種は育った。充分すぎるほど。本当に戻ってきてほしい。
樹が屋根を超えた頃、地面に張った根が家の基盤を浮かし始めた。樹が伸びるにつれて家は押し上げられ、今は大樹の枝の上に乗っている。お陰で家は何度も洪水を免れた。でも家に入るためには木登り技術が必須になった。
だから早く戻ってきてほしい。
それから一発殴らせろ。
「家の庭に植えなさい。きっと助けになる。種が育った頃、俺はここへやってくるから」
「ここは水害が多いから植物なんてすぐ流れちゃうよ」僕は言ったが、彼は笑うだけだった。僕は言う通り庭に種を植えた。
種はすくすく育った。あっという間に屋根より高い大樹になった。僕は窓の外を見下ろしながら思う。
戻ってこないかな。
彼は種が育ったころ戻ってくると言った。種は育った。充分すぎるほど。本当に戻ってきてほしい。
樹が屋根を超えた頃、地面に張った根が家の基盤を浮かし始めた。樹が伸びるにつれて家は押し上げられ、今は大樹の枝の上に乗っている。お陰で家は何度も洪水を免れた。でも家に入るためには木登り技術が必須になった。
だから早く戻ってきてほしい。
それから一発殴らせろ。
ファンタジー
公開:20/01/10 23:52
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