『猫と煙』 その目に映るもの

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子供の頃から疑問だった。
ウチの猫の風助は、料理をしているといつも寄ってきてじっとみつめている。
食べ物が欲しいのかとチーズの切れ端をあげるが見向きもしない。ただじっと料理が済んでコンロの火が消されるまで待っている。
父がタバコを吸っていると、咎めたい訳ではないだろうが煙を吐きかけられてもちんと座ってみつめている。

祖母がある時教えてくれた。
風助は昔、火事のあった家で奇跡的に生きのこった子猫で、その後に家が引き取ったのだそうだ。
私は五歳程で憶えていなかった事情。
そうか、だから風助は火や煙に対しての警戒心が強いのかもしれない。
もう二度と大切な家族が火と煙によって悲しい事にならないように。

そして今日、私の二十歳の誕生日。
ケーキに灯る蝋燭の火を風助はいつものようにみつめている。
彼のお蔭で私は無事に大人になれたのかもしれない。ありがとう、風助。
私は勇敢な猫の消防士を抱きしめた。
青春
公開:20/01/10 21:45

とーしろさん

はじめまして~。
いつだって初心で、挑戦者のこころでぶっ込みたい素人モノ書きです。

沢山の方々に支えられ、刺激を与えられ、触発されて今日ももちょもちょ書いております。
一人だけでは生み出せないモノがある。
まだ見ぬステキな創造へ、ほんの少しずつでも進んでいきたい。

ショートショートというジャンルに触れる切っ掛けをくださった、
月の音色と大原さやかさんを敬愛し感謝しております。

興味をもって読んでくださる全ての方にも、ありがとうございます~^^

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