雪女の涙

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昔から極寒の北国で猛烈な吹雪を起こすのは、雪女と言い伝えられている。その雪女は真冬の時期、家族である雪男や雪ん子と離れて遠征に出るため、寂しくなって家族を恋しく感じたときに涙を流すという。
船乗りに恋をした人魚の流した涙が、潤いのある美しい光沢から真珠に喩えられるように、北国では、クリスタルのように輝く雪氷を「雪女の涙」と呼んだ。
そんな洗練された雪氷に必ず美肌効果があると睨んだ化粧品会社の白雪堂は、雪女の涙というブランドでコスメを商品開発することにした。
真夜中の北国で深々と降り積もる雪の中、眩いばかりに雪明りを放つのが雪女の涙とされているが、採取するのは非常に難しいという。
ある真夜中、北国の大地で極秘裏に探し回っていた白雪堂の社員たちは、とうとう雪女の涙を発見した。
ところが、社員たちは、泣いた顔を見られたと思った雪女の逆鱗に触れ、翌朝に複数の巨大な氷柱となった姿で見つかったという。
ホラー
公開:20/01/10 19:33
更新:20/01/10 19:47
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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