感知センサー 暖

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ソファーに仰向でノートパソコンをお腹に載せ作品を書こうとしていた。暖房は電気セラミックファンヒーターだけ。人体感知センサーがあるとかで、特定時間が過ぎると切れ、前で何かの動きがあるとまたスイッチが入るという優れもの。

毛布を一枚かけ、とにかく何かを書こうとするがまるで思い浮かばず、いつの間にかうとうとしていた。寝返りを打ったり立て膝をしたりするとカチっという音が聞こえてファンが回り出す。それを何度も繰り返しながら夢を観ていた。

つらいことも多かったなあ。なんで作品が売れないんだろう。才能ないのかな。もうやめてしまおうか。などと目を閉じてうつらうつらしていると、立てた右膝にさわるものがある。柔らかくて毛がふわふわのそれは、直感的に、10年前に飼っていた猫の前足だと思った。暖まりに来たのだろう。

「大丈夫。きっと書けるよ」

そんな声が聞こえた気がした。目尻からすっと流れるものがあった。
ファンタジー
公開:20/01/12 13:00
251 セラミックファンヒーター

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド、タイッツー )

武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。

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