晴れを呼ぶ男

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オレが故郷を離れると、必ず嵐が来た。修学旅行や家族旅行はもう、大荒れだった。
心配していたことが起きたのは、オレが就職のために上京した時だ。
かつてない程の大嵐が故郷を襲い、河川の氾濫や土砂崩れで町を壊滅状態にした。
オレは、慌てて帰郷した。町に着いた途端、町は快晴になった。
オレは町の平和を祈り、神社に供物として「汗の染み込んだTシャツ」を置いてきた。それからは町はオレがいなくても平穏な日々が送れるようになった。台風もよけてゆく。適度に雨は降っても、嵐は来なくなった。
オレは安心して仕事に励んだ。仕事は軌道に乗り、結婚し、一児をもうけた。
最近では雨が全く降らない。毎日快晴だ。この夏もきっと地獄だろう。オレ達が南極に住んだりしたらきっと、地球は滅びるんだろうな。
雨が降らないからたまにこの地を出ないといけない。だから世界中を廻っているんだ。
オレの力を受け継いだ息子、修造と一緒に。
その他
公開:20/01/10 09:57

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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