予約本

　木曜日。カードＩＤ１０１５６６２４から、また同じ本のリクエストが入った。ネット検索システムを通じてのリクエスト。だが、本をとりに来る人はいない。もう半年にもなる。
　このカードＩＤは、ご家族からの本人死亡届けによって、抹消されている。しかし、毎回同じ本にリクエストが来るだけのことなので怖くはなかった。
　一年、三年、五年が過ぎてもリクエストは続いた。そんな折、その本が除籍本に指定されてしまった。
　私はその本を譲り受ける手続きをして、とある木曜日に、以前調査した際に判明していたその人の墓前に供えてあげた。
『東海道中膝栗毛　上　十返舎一九　岩波文庫』
　もっと早く、こうしてあげればよかったのかもしれない。そう思いながら日常に戻った翌週の木曜日、同じＩＤからまたリクエストが届いていた。
『東海道中膝栗毛　下　十返舎一九　岩波文庫』
　そりゃ、そうだよね。私は、カウンターで笑ってしまった。