ある日曜日の出来事

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 夜、男は缶ビールを片手に庭を眺め、昼間の事を思い出す。

『すいません。あなたの庭へ子どもが玩具を落としたようです。取りに行ってもいいでしょうか?』
 庭の手入れ中、遠くから声が響いた。
 塀の向こう側からだろうか。
 男は了承の返事をした。
『助かります。では電源を落としますね』
 周囲が急に静かになった。
 道路を走る車の音。
 水道の水音。
 庭木のざわめきが消えた。
 飛んでいた小鳥がボタボタと地面に落ちてきた。
 やがて辺りが暗くなり始め。
「やっぱ駄目だ!」
 とっさに叫んだ。
『残念です。では外にあるものだけ持って帰りますね』
 庭は再び明るくなり日常の喧噪も帰ってきた。
 その後はいつも通りの平穏な休日だった。

「まったく。何を持ってかれるところだったか」
 男はひとり呟き、空を見上げた。
「しかし、夜が寂しくなるな」
 煌めく星々の天幕にぽっかり丸い空間ができていた。
ホラー
公開:20/01/08 21:43
更新:20/01/08 21:55

ルイス足永( 関東 ケヤキの葉の上 )

ルイス足永(アシナガ)と申します。
普段はニコニコ静画に画像付きの作品を転がしています。
こちらにも載せれそうな作品の投稿をしたいと思います。
twitter:https://twitter.com/otoshibumi57
ニコニコ静画:http://seiga.nicovideo.jp/clip/2497487

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