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最初にそいつを見かけた時は、まだ若かった。私もそうだが、視界に入る奴の雰囲気は、私と同じくらいの年頃に感じられた。

それは私にひどく近づくわけでもなく、遠くからこちらをうかがっているような、付かず離れずの距離感を保っていた。

ふだんは意識しないが、気がつくと視界に感じるような存在だった。具体的に目に見えるのではなく、あくまでもそこにいると感じるのだ。

とくに何かをしてくるでもなく、遠巻きな存在。気にしすぎてもストレスになるだけなので、できるだけ無視するようにしてきた。もちろん直接話しをしたことなどもない。

50歳を越えた頃から、そいつが距離を縮めてきた気がする。そして70を過ぎた頃、いよいよ身近に迫ってきていた。自分そっくりのそいつは、出会った時に比べて老けているように見えた。

ある日、私は意を決して話しかけた。

「おい、お前は誰なんだ!」

「わかっているだろう。老いだよ。」
ファンタジー
公開:20/01/11 07:00
更新:20/01/10 11:27
248 老いは知らぬ間に オオカミの自信作

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド、タイッツー )

武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。

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