冷凍みかんと口内炎
12
10
年末、母が死んだ。89歳。あと1ヶ月生きていれば90歳だった。
納棺式に僧侶が来て枕経をよんでくれた。そのとき「どんなお母さんでしたか」と聞かれた。
一番に思い出したのが50年前のことだった。当時7歳だった私。冬に口内炎になっていた。みんなでおこたに入りながらみかんを食べているとき、私は口内炎のため食べられなかった。
「みかん、食べたい。でもお口が痛いの」泣きべそをかいている私をみて、母が家を出て行った。
2時間後、母が帰ってきた。手には冷凍みかん。片道1時間かかる鉄道の駅に行き、買ってきたのだという。
「溶けてしまったら染みるからね、凍っているうちに、痛い方の反対側で食べるのよ」
寒い冬の夜。暖かい炬燵にくるまれながら冷凍みかんを食べた。
納棺式の帰り、遠回りをして鉄道の駅に寄った。そこは5年前に無人駅になってしまい、売店もなかった。
「冷凍みかんください」
誰も居ない駅舎に言った。
納棺式に僧侶が来て枕経をよんでくれた。そのとき「どんなお母さんでしたか」と聞かれた。
一番に思い出したのが50年前のことだった。当時7歳だった私。冬に口内炎になっていた。みんなでおこたに入りながらみかんを食べているとき、私は口内炎のため食べられなかった。
「みかん、食べたい。でもお口が痛いの」泣きべそをかいている私をみて、母が家を出て行った。
2時間後、母が帰ってきた。手には冷凍みかん。片道1時間かかる鉄道の駅に行き、買ってきたのだという。
「溶けてしまったら染みるからね、凍っているうちに、痛い方の反対側で食べるのよ」
寒い冬の夜。暖かい炬燵にくるまれながら冷凍みかんを食べた。
納棺式の帰り、遠回りをして鉄道の駅に寄った。そこは5年前に無人駅になってしまい、売店もなかった。
「冷凍みかんください」
誰も居ない駅舎に言った。
その他
公開:20/01/09 10:55
文章を書くのが大好きです。
ログインするとコメントを投稿できます