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クレーター女。
それが私の小学校の時のあだ名。理由は右の掌にある直径3センチの丸い凹み。これが原因で私はイジメられた。だから私は、私のことを誰も知らない中学校に進学した。
でも、ついにバレた。水泳の授業で手を握っている私を先生が咎めたのだ。先生は私の掌を見て、少し黙ってから言った。
「これを見られたくなかったのか」
小さく頷く。
「吉村ー!」
突然、先生が大声で隣のクラスの男子を呼んだ。
「左手出せ」
吉村君が左手を広げると、掌の一部がボタンのように丸く盛り上がっていた。先生が吉村君のボタンを押すと、彼は「ピンポーン…って、先生やめてよ」と笑った。
「吉村はこのボタンをネタにしてるんだ」
先生が私の手を取って吉村君に見せた。「あっ」と彼は驚いて、それから左手を私の右手に重ねた。
鍵穴がハマるように、彼のボタンと私のクレーターが重なった。
「すげぇ!」
カチリと──。
私の心臓が音を立てた。
それが私の小学校の時のあだ名。理由は右の掌にある直径3センチの丸い凹み。これが原因で私はイジメられた。だから私は、私のことを誰も知らない中学校に進学した。
でも、ついにバレた。水泳の授業で手を握っている私を先生が咎めたのだ。先生は私の掌を見て、少し黙ってから言った。
「これを見られたくなかったのか」
小さく頷く。
「吉村ー!」
突然、先生が大声で隣のクラスの男子を呼んだ。
「左手出せ」
吉村君が左手を広げると、掌の一部がボタンのように丸く盛り上がっていた。先生が吉村君のボタンを押すと、彼は「ピンポーン…って、先生やめてよ」と笑った。
「吉村はこのボタンをネタにしてるんだ」
先生が私の手を取って吉村君に見せた。「あっ」と彼は驚いて、それから左手を私の右手に重ねた。
鍵穴がハマるように、彼のボタンと私のクレーターが重なった。
「すげぇ!」
カチリと──。
私の心臓が音を立てた。
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公開:20/01/09 09:07
更新:20/01/09 11:08
更新:20/01/09 11:08
スクー
手の中のクレーター
月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。
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