三日坊主と召喚くじ（二十七）

『金烏玉兎集（きんうぎょくとしゅう）』なる古書によれば、事のあらましはこうだ。
安倍晴明の宿敵で、師弟関係にもあった蘆屋道満は、晴明の留守中、彼の妻と恋仲になり、晴明が所持する秘書の在り処を聞きだし、盗んだ。挙句に帰宅した晴明を秘書の力で殺害。その後晴明の妻と結婚し、束の間の天下を貪るも、復活した晴明に返り討ちに遭い、妻ともども成敗、という――。

「不倫に謀殺、ドロッドロの泥沼じゃねぇか！道満最低だな！」
「事実ではありません。爺による歪曲です」
全面的にでないにしろ、『歪曲』という事は、一部認めるわけだ。元夫だから、少なくとも不倫は絶対。
「歴史ってのは、体制側の都合に左右されんだよ。晴明本人か、バックの朝廷や皇室の意向かはともかく、徹底的な道満叩きがあったのは、あり得る話だ」
「道満様とは、誓いを交わしただけです。来世は必ずと……」
鬼の目にも涙。用法は違うが、不覚にもキュンとした。