本当の自分

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朝風呂はいい。馬鹿な元彼に撫でられた髪も、すぐ綺麗になる。泣き腫らした瞼は冷たい水で流せば、どんどん腫れが治っていく。真っ赤に充血した目は、まるで小さな太陽のようだ。外は明るく、希望に満ちている。気分転換に近所を散歩しよう。朝風呂は私をそんな気分にさせてくれた。
少し緩めで小洒落た服を着て向かったのは本屋。私が小さい頃よく来たところだ。当時、読みたい本はいつも置いてあった。
「こんにちは」
「こんにちは、あずさちゃん」
おじさんは昔の私しか知らないはずなのに、すぐに私だとわかった。
「お久しぶりです」
「まるで昨日のことのようだ」
「私は懐かしく思いますよ」
「お探しの本はこれか?」
おじさんが懐かしい漫画を差し出す。
「無理するでないよ」
泣き足りない目、流したくなかった髪、獣のような赤い瞳。すぐに帰宅し、化粧を落とす。大人買いしたその漫画を読むと、少し自分が帰ってきた気がした。
その他
公開:20/01/08 15:31

みみ

むかし話、おとぎ話が小さい頃から大好きです。
誰かの目に留まるような物語が書けるように頑張ります!

コメントや☆をつけてくださる方、本当にありがとうございます。嬉しいなぁ、幸せだなぁと心から思いますm(_ _)m

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