台風ビンゴ

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ついに来た。超大型台風上陸。私は災害保険台風特約ビンゴカードを手にして迫りくる台風を待ち望む。ビンゴになれば、この古い家を新築に建て替えられるのだ。
「田んぼ見てくるか。川が氾濫してなければいいが」
台風情報を不安そうに見ていた夫が言った。
「行った所でどうにもならないわよ」
そう答えた時、ガラスの割れる音がした。裏口のほうだ。まずは一つ。私はビンゴカードの『窓破損』に穴を開ける。
地震みたいに家が揺れていた。
「凄いわね」
「凄いな」
屋根がベリベリと剥がれる音がして、天井から雨漏りがした。これで『屋根破損』と『雨漏り』。いい調子だわ。
『落雷による家電の破損』、『断水』、『床上浸水』、『停電』、次々に穴を開けていく。
リーチ!
「あなた、やっぱり田んぼが心配だわ。見てきてくれる?」
「わかった」
「お願いね」
夫が嵐の中に消えた。
残る穴は『配偶者の死亡、又は行方不明』。

お願いね。
ファンタジー
公開:20/01/08 14:49
更新:20/01/08 15:03
スクー

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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