復活の日(go back)

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 およそ十日ぶりの町はいつもと同じようで、どこかが違っていた。匂い? 年末年始の残響? 見知ったはずの町並みが、一度洗濯されたかようによそよそしい。疲労だろうか? それとも、変わったのは私なのか?
 いわれなき罪を暴かれた私は、弁明する場も与えられないまま当局に拘束された。その場で理由を問い質したが「AIが判断した」の一点張り。AIは、私をレプリカントだと判断したという。だが私は、取調室で行われたフォークトカンプフ試験を難なくクリアした。それからはただ金属製の箱のようなところで時折明滅する青色のLEDを見つめる時間が続いた。それが九日間であったことは、あの箱を出られたからこそ判明したことだ。あそこでは、時間も空間も身体も記憶も失っていた気がする。
「あらゆる関連性を失った人間は、自らの内部に響く複数の声のどれにも注意をむけられなくなる」
 強い風の中、私は眼や耳よりも、匂いに頼って歩いた。
その他
公開:20/01/08 10:07
新出既出アカウント復活 運用どうしよう

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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